2006年03月07日

Line 6 PODについて

ディジタル信号処理で研究をしているくせに、ディジタル機器があまり好きではないたてべです。今日は、モデリングアンプとして確固たる地位を築き上げた、Line 6 PODについて語りたいと思います。たてべはPODユーザではないので、あまりPODの味方をしてあげられませんが、出来るだけ偏見を少なめにして批評したいと思います。

PODに対する意見で、よく耳にするものとして挙げられるのは

1. 不自然
2. ディジタル臭い
3. モデリングのオリジナルと比較して、随分違う。

というのが多いでしょう。この意見は、個人的に理解出来ます。まず1ですが、これはヘッドホンでPODの音を聞けば、「言われてみれば確かに…」と感じられると思います。ヘッドホンを使って音を聞くと、どうしても些細な音の違いがわかりやすくなってしまいます。合成音声の研究等でも、ヘッドホンで音を聞いて自然性を判断するという方法は、非常に一般的です。2も1とほぼ同様の問題です。恐らく、感じているものに対する表現の違いでしょう。

3は、こればかりは仕方のない問題です。PODが、他社製のアンプを完璧にモデリング出来るのなら、恐らく数年以内にLine 6社以外のアンプ会社は倒産してしまうでしょう。実際にこんなことが起こり得るか、と言われると、まず起こらないでしょう。Mesa Boogie等に代表される近代的なアンプの回路をモデリングしようとすると、膨大なタップ長のフィルタが必要になります。近似精度を上げようとすると、無限にタップ長が必要になります。以前、たてべは自分で真空管の挙動を、数式を使って近似したことがありましたが、実際の挙動と比較すると随分と違いが目立ちました。Line 6社が、こういう近似式を利用しているかどうかわかりかねますが、イコライザ回路一つを取ってもモデリングは容易ではありません。

ではPODがダメなのかというと、そんなことはなくて、PODの欠点と役割を理解した上で、使ってやればいいのです。例えば、1と2を解決するために、PODの後段にチューブサチュレータのような機器を繋いで味付けすれば、ディジタル臭いと表現されるものを減らせるかもしれません。そもそも、ヘッドホンなどを使わずに(自宅練習では使わざるを得ない場合があるので仕方ありませんが)、線形性の高いパワーアンプ(個人的にギターアンプ用ではない方がいいと思います)へ出力して、スピーカで鳴らせば、少なくとも不自然さは減ることでしょう。

3については、諦めるというのが一番でしょう。そもそも4万円か5万円だかで、Marshall, Mesa Boogie, Matchless, Roland JCなどの良いアンプの音色が手に入るなんて、そんな美味い話はありません。モデリングに気にくわない部分があるのなら、ペダルエフェクタで味付けして、納得のいく音にしましょう。例えは悪いですが、各ブランド本家のアンプが有名レストランのフルコースだとしたら、PODはせいぜい有名レストランの味を謳ったコンビニ弁当でしょう。…ちょっと言い過ぎました。

「お前はどうなんだよ?」と言われそうなので、PODに対する個人的な感想を書いておきます。手元にあれば使います。使ってそこそこ楽しめると思います。ただ、ではこれがお前の音か?と尋ねられたら、いいえ違います、と言います。先の例よりも、もっと悪い言い方をすると、PODはたてべにとってMcDonald'sのハンバーガーと同じです。食べ物だけど、料理ではない、という…


[余談]POD+パワーアンプ+スピーカでもディジタル臭さは残る!と言い張る人がいます。
非常に粗っぽく、悪い方法で論破します。そういう人は、"PODで鳴らしているとわかっているから"だと思います。よくこの手の人達を論破しようとする人が、ブラインドテストを持ち出しますが、比較対象があまりにも不明確(この場合、"PODのディジタル臭さ"の正体がわからない。)な場合、確率に寄ると考えていいのではないでしょうか。

ヴァイオリンの名器ストラディバリと、その他の非常にストラディバリに近いと言われるヴァイオリン2本を使った、3本のうちからストラディバリを選ぶという、プロヴァイオリニストを対象にした選択実験では、実際にストラディバリを使用した人でさえ、選択を誤るという結果になりました。ちなみに正答率は約33%、当てずっぽで選んで正解する確率と一致します。解答者も「実はわからなかった」と答えた人が多かったそうです。

ブラインドテストが参考実験にならない以上、簡単に"ディジタル臭さ"を主張する人をいじめられませんが、機材を隠して弾いて見せて、PODだとばれたら褒めてあげればいいのではないでしょうか。本人が音を気に入っていれば、いいでしょう。…読み返してみると、論破したとは言い難いですね(笑)
posted by たてべ at 18:34| Comment(1) | TrackBack(0) | Amplifiers | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
カナブンはNAMMのLine 6のブースで捕獲しましたw
Posted by 購読者 at 2006年03月08日 00:15
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