2006年02月27日

日本語単母音分析

暇というわけではありませんが、折角思いついたんですからやってしまおうということで、企画第一弾の”日本語単母音分析”です。単母音の分析と特徴について考える前に、幾つか知っておかなければならない専門用語がありますので、その解説を先に行います。それから、日本語単母音の分析結果と、広く知られている日本語単母音の知覚について述べたいと思います。


ホルマント formant
音声のスペクトル包絡上で特定の周波数領域にエネルギーが集中して生じる山。山の中央値、あるいは振幅最大の周波数をホルマント周波数、その帯域幅をホルマント帯域幅という。

ホルマントは、低い周波数から順に、第一ホルマント、第二ホルマントのように呼ばれる。ホルマントの周波数と帯域幅やその時間変化パターンは、音韻の音響的キューとして重要であり、特に、母音の音韻性は第一、第二、第三ホルマント周波数で決定される[1]。


実験条件
 サンプリング周波数:48 kHz
   量子化ビット数:16 bit
     フレーム長:5.3 ms
    フレーム周期:2.6 ms
       窓関数:Hanning
単母音のデータベースは、NTTコミュニケーション科学基礎研究所による親密度別単語了解度試験用音声データベースに収録されている、男性話者misの日本語単母音/a/と/u/を用いました。

この知識を踏まえて、日本語単母音/a/と/u/を見てみましょう(以下、第一ホルマントをF1、第二ホルマントをF2と呼ぶ)。


vowel_a.png
図1:日本語単母音/a/のサウンドスペクトログラムとその対数スペクトル包絡


まず、/a/のサウンドスペクトログラム(図1a)の縦方向(周波数方向)の下から上を見ていくと、周波数が1 kHzの周辺の帯域に、エネルギーが集中していることがわかります。次にエネルギーが集中しているのが2 kHz周辺であることもわかると思います。対数スペクトル包絡(図1b)は、サウンドスペクトログラムの100 ms付近を縦にぶつ切りにした断面図です。F1は約600 Hz、F2は約2.5 kHz(ちょっと高いですね)であることがわかります。


vowel_u.png
図2:日本語単母音/u/のサウンドスペクトログラムとその対数スペクトル包絡


同様に、/u/のサウンドスペクトログラム(図2a)の下から上を見ていくと、かなり低い周波数帯域に、エネルギーが集中していることがわかります。対数スペクトル包絡(図2b)では、F1は約200 Hz、F2は約1.2 kHzであることがわかります。

実は、上で述べられている通り、母音の知覚に対して重要な働きをするのは、このホルマントなのです。F1とF2がどの周波数帯域にあるか、ということが大事なのです。男性の日本語単母音のホルマント分布は

日本語単母音 /a/(男声)F1:600-800 Hz, F2:1.1-1.8 kHz
日本語単母音 /u/(男声)F1:180-500 Hz, F2:1.1-1.9 kHz

となっています[2]。大まかに言うと、F1とF2がどの帯域に存在するかによって、/a/と聞こえるか、/u/と聞こえるか、はたまた/o/と聞こえるか、ということが決まるのです。

一般的なペダルワウでは、ペダルを戻したときのピーク周波数が約200-600 Hz、踏み込んだときのピーク周波数が約2 kHzになるように設計されています。昔のYoung Guitarのペダルワウ特集でも触れられていたと思いますので、探して読んでみて下さい。

【参考文献】
[1] 日本音響学会 編, 新版 音響用語辞典, (コロナ社, 2004).
[2] 宮本健作 編著, 聴覚・言語・嚥下の基礎と障害-リハビリから福祉まで-, (ブレーン出版, 2005).
posted by たてべ at 14:54| Comment(0) | TrackBack(0) | Pastimes | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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